アロマセラピーと精油の歴史はエジプトから始まった!?

アロマセラピーと精油の歴史はエジプトから始まった!?

昔から香りは神に関わる儀式や、亡くなった者への弔いや病人など様々なシーンで使われてきました。

 

アロマセラピーの歴史はいったいどのように始まったのか、その歴史を紐解いていきましょう。

 

参考文書
日本アロマコーディネーター協会
認定校アクア
アロマコーディネーター資料より

 

メディカルアロマ検定 公式サイト

 

@エジプト

アロマセラピーと精油の歴史はエジプトから始まった!?

 

紀元前3000年頃に建国された古代文明発祥の地であるエジプトでは、香りは主に神へ捧げ物として用いられて「薫香」は悪魔払いに使われ、病気を治療するにも使われていたそうです。

 

*薫香(くんこう)とは香木や樹脂やスパイス、ハーブなど植物の精油成分を焚いて燻らせることで、場面ごとに単品で使われることもあれば調合して使われることもありました。

 

エジプトの人々は太陽神(ラー)に対し、香煙に魂が乗って天国に導かれるように祈りの儀式を捧げていました。

 

時刻によって焚かれるものは異なっており、朝は日の出とともにフランキンセンス(乳香)が焚かれ、正午にはミルラ(没薬)が焚かれました。

 

また、日の沈むときはキフィと呼ばれる16種類の香りをブレンドしたものが焚かれ、キフィは人を寝付かせ不安を鎮め楽しい夢を見させたといいます。

 

旧約聖書によると香りは、先に神に捧げられ次いで僧侶、王が使うことを許され続いて側近たちから民衆へ広がっていったとされています。

 

アロマセラピーと精油の歴史はエジプトから始まった!?

 

 

ミルラ(没薬)はミイラの語源になったといわれおり、ミイラを作るときにミルラなどのたくさんの香料を使ったからといわれます。


 

 

キフィはお香専門店や通販で購入できるので楽しい夢を見たい方は試してみてください。


 

 

軟膏と香油

エジプトでは、香りを楽しむだけでなく照りつける太陽から肌を守るために香油が大量に使われ、入浴後には香油をつけていたそうです。

 

この時、珍重された香油がエジプト産のユリ油が入っている「サグディ」とバラノス油(ホースラディッシュツリーの実の油)にミルラとフランキンセンスが入った「メンデシウム」です。

 

イギリスの大英博物館で、紀元前3000〜2000年頃の石膏、オニキス、ガラス、象牙、木でできた軟膏や香水入れを見ることができます。その中にはミルラ、オレガノ、フランキンセンス、シダーウッド、アーモンド、カンショウ、コリアンダー、カラマスなどエジプトで採れる植物の香りの軟膏や香水が入っていたといわれます。

 

エジプトの壁画で、女性が頭の上に紡錘形の帽子のようなものを乗せている姿を見かけます。あれは社交場に香水の代わりに身に着けた軟膏で、この紡錘形の軟膏は動物性油脂に各種香料をブレンドしたもので、体温で少しづつ溶け頭を伝い体にも香りがしみ込んでゆきあたりに良い香りを漂わせたといわれます。

 

ツタンカーメン王と香り

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1922年にツタンカーメンの墓が開けられました。そのとき香りの瓶が50個ほど発見されましたがそのほとんどが盗賊により空にされていました。その中には軟膏が残っているものもあり、すでに凝固していましたがフランキンセンスやカンショウが含まれていたことがわかっています。この墓の中には400リットルもの軟膏が入っていたといわれています。

 

クレオパトラと香り

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クレオパトラはバラの花が好きで室内に厚さ46センチもバラの花を敷きつめていました。そして動物性香料のムスクやシベットもお気に入りでした。絶世の美女といわれた彼女ですが美貌だけでなく香りの力でも自分の魅力を引き出していたのでしょう。

 

Aイスラエル

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紀元前15〜1世紀頃のイスラエルは旧約聖書の舞台で、数々の香りのエピソードが綴られています。この時代も神への捧げものとしてフランキンセンスなどの香りが添えられ神と人間をつなげる役割で精油が使われていました。

 

モーゼのエジプトからの脱出と香り

モーゼがイスラエルの民を率いてエジプトを脱出する場面に記載されている「エジプト記30章」に聖なるオイルと聖なる香りの作り方が記されています。

 

ソロモンの栄華と香り

ソロモン王の香りにまつわるエピソードがあります。アラビア南部のイエメンにあったシバの嬢王の国から「香料の道(紅海沿いの道)を北上した隊商によって、ソロモン王に黄金とミルラとフランキンセンスが献じられました。

 

キリスト誕生と香り

キリスト誕生にはアロマセラピーに出てくる精油の名前が登場します。新約聖書のマタイの福音書2章に、東方の三使者が「母マリアのそばにいる幼子にひれ伏し、黄金(偉大な商人のシンボル)とフランキンセンス(偉大な予言者のシンボル)とミルラ(偉大な医者のシンボル)などの貢物をした」とあります。そのとき幼子であったイエスはフランキンセンスを選んだといわれます。

 

 

フランキンセンスとミルラの香りは聖なるものとして扱われていたようですね。


 

B古代ギリシャ

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古代ギリシャの紀元前9〜4世紀頃には、哲学、文学、化学、美術はヨーロッパ文化の源して、人類の歴史に大きな影響を与えています。その中で人々は純粋な香りには人の力は及ばないと考えていました。ギリシャ神話に登場する神々は香りの雲に乗って地上に舞い降り、芳しいローブをまとっていたといわれます。ギリシャ人は没後、美しい香りが満ちあふれる極楽に行くと信じられていたともいわれます。

 

「医学の父」ヒポクラテスと香り

「医学の父」ヒポクラテスは、「健康は芳香風呂に入り、香油マッサージを毎日行うことである」と言っています。また、芳香原料を伝染病の予防として焚くことを試みていたそうです。

 

ギリシャ人と香り

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ギリシャ人は特にバラが好きでした。紀元前5世紀に、アテネのソロンは高価で取引されるバラの香油やバラ水と軟膏の売買を自治安定のために禁止しましたが効果はありませんでした。同じ頃、ペリクレス時代(ギリシャ文化が高まった時代)には、ぶどう酒にもバラの香りが付けられるほどバラの人気が高まりました。

 

高価な香りの植物についての研究

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高価な香りについての研究が行われたのは紀元前4世紀ごろからです。アリストテレスの弟子のテオフラストスが「植物史」を著しています。彼はアラビアの香料を研究するために使者をイエメンやオマーンに派遣しています。そして、フランキンセンスやミルラの栽培・生育について記述しています。

 

アレクサンダー王と香り

時の王のアレクサンダー王も香り好きで、「軍人の強い匂いは存在感を高める」としたくさんの香油を使っていたとされます。

 

C古代ローマ

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ローマ文明はバラが生活にとても密着していた文明です。バラは色々な儀式は晩餐会で散らされ宮廷の泉にはバラ水が湧き公衆浴場までもがバラでいっぱいでした。バラの枕、バラの入りのワイン、バラの花飾りなど様々なものにバラが使われており、衣類までバラ水で洗っていたという文献も残っているそうです。

 

ネロ皇帝の香り好き

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ネロ皇帝は豪華なバラの花の宴会を開いたとされ、パラティネの丘に建てた黄金の宮殿では、皇帝が合図すると天井が開き、バラの花が降り銀のパイプからバラの香りがする水が降りかけられていたということです。妻のポッペアが亡くなってからアラビアにある1年分のフランキンセンスを焚いて魂を慰め別れを惜しみました。

 

デオスコリデスの薬草医学の論文

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デオスコリデスの死後1000年にわたり、西洋医学の参考書になりました。現在の薬草の知識もこの論文に由来しているそうです。

 

 

バラの精油は現在では高価なものですが、古代ローマ時代ではバラを惜しみなく豪華絢爛に使っていたとは羨ましい限りです。バラは気持ちを高揚させ幸せな気持ちにするので、いつの時代の人も魅了されるのでしょう。


 

 

Dイスラム

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香りを東洋から西洋に運ぶ重要な役目をイスラムが担っていました。陸路ではアフリカ・ヨーロッパ〜イスラム・インド・長安(シルクロード)海路ではインド・インドネシアの島、中国東海岸地方で主に運ばれたものはシベット、アンバー、シナモン、コショウ、サンダルウッドクローブ、ナツメグ、沈香、ムスクなどが運ばれました。

 

アロマセラピーと精油の歴史はエジプトから始まった!?

 

香りは女性のお清め

ソロモン王時代のユダヤにおいて女性は王様に会うためには「お清め」が必要でした。お清めは1年を要し、最初に半年はミルラの香油を用い、その後の半年は他の何種類かの香油を用いていました。また、砂漠地帯に住む人々はなかなか入浴できなかったのでデオドラント材としてミルラなどの香油を浸した布をいつも胸元に忍ばせていました。

 


 

Eヨーロッパ中世・近代

この時代は香り文化が発展し成長していった時代といえます。古くからの香りの抽出方法では本来の花の香りとは異なっていましたが、アルコールの発見や蛇管と蒸留器の発明により花本来の香りを抽出し保存することが可能になりました。

 

アヴィケンナの発見

アラブ人のアヴィケンナ(医者・科学者・哲学者)は卑金属(金以外の金属)から金を作るという錬金術の過程の一部でバラを用いていたところバラから精油とバラ水が採れることを発見しました。

 

香料貿易

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新大陸が発見され、香料貿易も世界規模になり大航海時代が始まりました。ヨーロッパ人は「コショウ」を純金と同じ価値に位置づけ様々な様々な香料やスパイスを探し求めました。

 

ラベンダー水

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12世紀、ドイツのベネディクティン派の尼僧ヒルデガルドが発明されたといわれています。その後、イギリスやフランスでも作られ特に1370年シャルル5世は庭にラベンダーを植えさせ、自らラベンダー水を作っていたといいます。現在ではイギリスの香りの代表として優雅で品のある香水として売られています。

 

ハンガリーウォーター

14世紀、フィレンツェの修道尼マリア・クレメンティネが伝えたといわれます。ハンガリー王妃(70歳)のリウマチよ若返りの妙薬としており、その効果は隣国のポーランド国王に求婚されるほどだったそうです。1370年にはエリザベス女王にも捧げれました。

 

アロマセラピーの進歩

これまでは口伝で伝承されてきたアロマセラピーも16世紀に入ると「新完全蒸留読本」や「新大蒸留読本」や「植物読本」などの書物としてアロマセラピーは体系づけられました。

 

ペストの流行と香水

17世紀イギリスでペストが大流行しました。しかし、香水を作る工場で働く人はペストにかかりにくかったと言われています。ドイツのカルペッパーは「香水は確かに複合した薬物である。これは熱しないで心に影響をを及ぼし、あらゆる悪臭を取り除き私たちを取り巻く空気中の感染源を除去する」と提言しています。

 

 

カルペッパーは17世紀にイギリスで活躍した薬剤師で、多くのハーブ療法を一般の人に広めました。現代でも「イギリスのハーブ療法の父」といわれ人気も高く親しまれています。


 

 


 

F現代

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18世紀以降の現代では香りは香水の分野で用いられ、18〜19世紀のヨーロッパ貴族の間ではなくてはならないものだったのでしょう。

 

カトリーヌ・メディチとフランスの主アンリ2世の結婚

カトリーヌ・メディチはイタリアのルネッサンスの仕掛人メディチ家の出身で、メディチ家はイタリアのルネッサンスを支えていました。ミケランジェロやボッティチェリのスポンサーであった他に調香師を抱えていました。メディチ家では特注の香水を作らせ、衣装、化粧を含め豪華なメディチ家独自の文化を築いていきました。

 

フランスはヨーロッパになかでも目立たない農業国でしたがフランスの主であるアンリ2世のもとへカトリーヌが嫁ぐときに、カトリーヌお抱えの調香師や衣装の仕立て人、料理人を連れて嫁いだのが元でイタリアの文化、贅沢さ、洗練さを持ち込んだので今やフランスは香りと料理とモードの国になっています。

 

 

フランスの香水は有名ですが独自に発展したのではなく、イタリアのカトリーヌ・メディチがフランスのアンリ2世のもとへ嫁いだのがフランスの香り文化の発展につながったそう。


 

マリーアントワネットとポンパドール夫人と香り

アロマセラピーと精油の歴史はエジプトから始まった!?

 

彼女たちはジャスミン、ローズ、バイオレッドなどのフローラル系の香りを好みました。
ルイ14世はローズウォーターとマジョラムで部屋を香らせ、衣類はクローブ、ナツメグ、アロエ、
ジャスミン、オレンジウォーターで洗わせました。
新しい香水が自分のために毎日作られるべきだと言っていました。

 

ナポレオンと香り

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1804年に皇帝についたナポレオンは大の清潔好きで、石鹸で体を洗いオーデコロンをつけていました。このオーデコロンはドイツのケルンに住んでいたイタリア人の理髪師が考え出したもので、ナポレオンに呼び寄せられその一族はパリにオーデコロンの店を開きました。

 

 

ナポレオンの愛したオーデコロンは「4711」として現在でも売られており「世界で最初のオーデコロン」として愛されています。

 

「4711」はオレンジ、ローズマリー、ラベンダー、ネロリなどのアロマセラピーでなじみのある精油(エッセンシャルオイル)で作られており、その爽やかな香りは男女ともに気軽につけれることが今でも愛される理由でしょう。


 

アロマセラピーという言葉の誕生

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「アロマセラピー」という言葉が生まれたのは、なんと1920年代になってからの事です。フランスの科学者「ルネ・モーリス・ガットフォセ」が研究中に片手にやけどを負いとっさにそばにあったラベンダー油に手をつけたところ、やけどは悪化することなくむしろ跡形もなくびっくりするような速さで治っていきました。そこで、ガットフォセは精油の研究を始め「アロマセラピー(芳香療法)」という言葉を作ったのです。そして、様々な論文も発表しました。

 

療法としてのアロマセラピー

アロマセラピーと精油の歴史はエジプトから始まった!?

 

フランスの医学博士ジャン・バルネは薬用植物を治療に興味を持ちアロマセラピーが大きな可能性を秘めた治療法である事を確信し様々な症状に精油を用いてその結果を論文で発表しています。ジャン・バルネは1964年に「芳香療法」という本を出版しています。

 

 

ガットフォセさんはやけどを負ったのは気の毒でしたが、この偶然の事故がなかったら「アロマセラピー」とい言葉は生まれてなかったかもしれませんね。


 

まとめ

いかがでしたか。
「香り」という文化は遙か昔の歴史とともに人々に親しまれ、重宝されてきたことが垣間見られ特に時の権力者に愛されていたことなどは、とても興味深いですね。

 

 

 

メディカルアロマ検定 公式サイト